こんにちは。オーテックプラス本店です。
トラックの後部に取り付けられている、大型のバンパー状の部品。
一般的には「リヤバンパー」と呼ばれることが多いですが、車両によっては保安基準上の突入防止装置として重要な役割を持っています。

突入防止装置は、後方から乗用車などが追突した際に、追突車両の前部がトラックの荷台やフレーム下へ潜り込むことを防ぐための安全装置です。
見た目ではバーが付いていて問題なさそうでも、取付高さ、後端からの距離、横幅、強度、腐食状態などによって、継続車検で不適合になることがあります。
今回は、トラックの車検時に意外と見落とされやすい、リヤ突入防止装置についてご紹介します。
突入防止装置とは?
トラックは乗用車よりも荷台やフレームの位置が高いため、後方から乗用車が追突すると、乗用車のボンネットやフロント部分がトラックの下へ入り込む危険があります。
この「潜り込み」を抑えるため、車体後部の低い位置に設けられているのが突入防止装置です。
審査事務規程では、一定の貨物自動車の後面に、追突車両の車体前部が突入することを有効に防止できる装置を備えることが求められています。装置には、強度、形状、取付位置、取付方法などの基準があります。

リヤバンパーが付いていれば大丈夫ではありません
現場でよくある勘違いが、
「後ろに鉄のバーが付いているから大丈夫」
という判断です。
しかし、突入防止装置は単に横棒が付いていればよいわけではありません。
車検では主に、次のような部分が確認されます。
- 地面からの高さ
- 車体後端からの奥行き
- 装置の横幅
- バー断面の高さ
- 左右の取付位置
- ステーやボルトの固定状態
- 腐食、亀裂、変形の有無
- 歩行者に危険を与える突起の有無
車両総重量や製作時期、リヤオーバーハング、車両構造によって適用される基準が異なるため、隣のトラックと同じ形だから適合するとは限りません。
車検で重要になる地上高
現行の審査事務規程では、車両総重量3.5tを超える一定の貨物自動車に備える突入防止装置は、空車状態で装置下縁のすべての位置が、原則として地上550mm以下になるよう取り付ける基準が示されています。
この地上高は、トラックの車検で非常に重要な確認項目です。
例えば、次のような変更を行うと地上高が変わることがあります。
- リヤサスペンションを変更した
- タイヤサイズを大きくした
- 車高を上げた
- 突入防止バーを別の位置へ移設した
- 荷台修理時にステーを作り直した
- バンパーを社外品へ交換した
以前は適合していても、修理や改造後に地面からの高さが基準を超えてしまうことがあります。
測定は基本的に空車状態で行うため、「荷物を積めば下がるから大丈夫」という判断はできません。
車体後端から奥に入り過ぎても不適合になる
突入防止装置は、低い位置に付いているだけでは不十分です。
車体後部の奥深くに取り付けられていると、追突車両が突入防止装置に当たる前に、荷台やパワーゲートなどへ潜り込んでしまう可能性があります。
審査事務規程では、車両総重量3.5tを超える一定の貨物自動車について、突入防止装置の平面部と、地上1,500mm以下にある車両後端部分との水平距離を、原則400mm以内とする取付基準が示されています。
つまり、リヤバンパーが荷台後端から奥に入り過ぎている車両は注意が必要です。
特に次の車両では、位置が変更されていることがあります。
- ダンプ
- 積載車
- パワーゲート車
- アームロール
- 塵芥車
- クレーン付きトラック
- 重機運搬車
- 荷台を延長した車両
荷台の修理や架装変更後は、必ず後端からの距離を実測する必要があります。

横幅にも基準があります
突入防止装置には、車体後部を広い範囲でカバーするための横幅も必要です。
視認による審査では、一定の貨物自動車に備える突入防止装置について、車幅の60%以上の長さを有することが求められる場合があります。
また、一定の装置では、装置の最外縁が後輪最外側から内側100mmまでの範囲にあることなど、左右方向の取付位置も確認されます。
そのため、中央部分に短いバーが1本付いているだけでは、車両によっては必要な範囲をカバーできない場合があります。
よくあるのが、パワーゲートや油圧装置を取り付けるために、純正の突入防止装置を切断または短縮しているケースです。
作動スペースを確保する必要があっても、必要な幅や強度を失ってしまえば、そのままでは適合しない可能性があります。
バーの断面高さにも注意
一定の車両総重量3.5t超の貨物自動車に備える突入防止装置では、平面部の断面高さが100mm以上であることが審査項目に含まれます。
そのため、細い丸パイプや強度の低い角パイプを、見た目だけリヤバンパーとして取り付けたものでは、突入防止装置として認められない可能性があります。
特に、腐食した純正バーを取り外して、現場で簡単に細いパイプを溶接した車両は注意が必要です。
装置の形だけでなく、追突時の荷重に耐えられる構造と取付方法が求められます。
腐食や変形も車検不適合の原因になります
突入防止装置は、車両後部の低い位置にあるため、雨水、泥、融雪剤などの影響を受けやすい部品です。
審査事務規程では、装置は堅ろうで運行に十分耐えるものであり、腐食などにより取付けが確実でないものは適合しないとされています。
確認したい箇所は、バー本体だけではありません。
- バー内部の腐食
- 左右の取付ステー
- フレームとの接続部
- ボルト穴周辺
- 溶接部分
- 補強プレート
- 格納ロック部分
表面だけきれいに塗装されていても、内部が腐食しているケースがあります。
ハンマーで軽く確認した際に穴が開く、ステーが層状に剥がれる、手で揺すると大きく動くといった状態では、十分な強度が確保できません。
軽い曲がりだから大丈夫とは限りません
後退時に壁や障害物へ接触し、突入防止バーが曲がっているトラックも少なくありません。
少しの変形に見えても、次のような問題が発生することがあります。
- 地上高が左右で異なる
- 車体後端からの距離が大きくなる
- 取付ステーに亀裂が入る
- ボルトが緩む
- バーの有効幅が不足する
- 外側端部が後方へ突出する
- 鋭利な部分ができる
突入防止装置の外側端部が後方に曲がっていたり、鋭利な突起があったりして、歩行者などに傷害を与えるおそれがある状態も認められません。
「まだ付いているから使える」と判断せず、変形した場合は寸法と取付部を確認することが必要です。
格納式・可動式は正しい位置で固定できることが重要
ダンプ、積載車、アームロールなどでは、作業時に干渉しないよう、突入防止装置が格納式や可動式になっている場合があります。
このタイプは、走行時の正規位置へ確実に戻せることが重要です。
よくある不具合には、次のようなものがあります。
- 固着して下げられない
- ロックピンが入らない
- 左右の高さが合わない
- 格納位置のまま固定されている
- スプリングやヒンジが破損している
- 油圧シリンダーから漏れている
- 走行振動で位置が動いてしまう
突入防止装置は、振動や衝撃などによって緩みが生じないよう、確実に取り付けられている必要があります。
作業時に動けばよいのではなく、走行状態で基準位置を保持できなければなりません。
パワーゲート自体が突入防止構造になる場合もあります
車両によっては、リヤリフトゲートや荷箱後面などの車体構造が、突入防止装置と同程度以上の効果を持つ構造として扱われることがあります。
ただし、単にパワーゲートが付いているだけで自動的に適合するわけではありません。
車両総重量やリヤオーバーハングによって、車体後面構造の幅、地上高、後端との距離などの要件を満たす必要があります。例えば車両総重量7t未満の一定の車両では、構造部の幅が車幅の60%以上、下縁の地上高が原則550mm以下などの基準が示されています。
ゲート交換や架装変更を行った場合は、元の認証状態と同じ構造か、寸法や強度を満たしているかの確認が必要です。
スペーサーを入れて後方へ移動した車両
荷台や架装物との関係で、純正の突入防止装置とステーの間にスペーサーを入れ、装置を後方へ移動している車両があります。
審査事務規程では、一定の条件を満たすスペーサーによる取付変更についても細かな要件が定められています。
スペーサーの長さ、板厚、溶接状態、プレート寸法、取付位置などが確認対象になるため、単純に角パイプを挟んでボルトを延長すればよいわけではありません。
後方へ移動する加工を行う場合は、強度検討や基準の確認を行ったうえで施工する必要があります。
継続車検で不適合になりやすい事例
実際の車検整備では、次のような状態に注意が必要です。
- バーが曲がっている
- 地上高が高過ぎる
- 荷台後端から奥に入り過ぎている
- 横幅が不足している
- 細いパイプへ交換されている
- ステーが腐食している
- 溶接部分に亀裂がある
- 取付ボルトが緩んでいる
- 外側端部が後方へ曲がっている
- 鋭利な切断面が残っている
- 格納式装置が正規位置で固定できない
- パワーゲート取付時に一部を切断している
- 社外バンパーに交換されている
- 荷台延長後も元の位置のままになっている
特に、全塗装や荷台修理を行った車両は要注意です。
きれいに塗装されていても、装置の寸法や内部腐食、取付強度が適合しているとは限りません。
車検前に確認したいポイント
車検前には、次の項目を確認しておくと安心です。
地上高
空車状態で、突入防止装置下縁の高さを測定します。
後端からの距離
荷台、パワーゲート、架装物などの車両後端から、装置の平面部までの水平距離を確認します。
横幅と左右位置
装置が車両後部を必要な範囲でカバーしているか確認します。
腐食と強度
バー本体、ステー、ボルト、溶接部、フレーム側取付部を確認します。
格納・固定機能
可動式の場合は、走行位置へ戻して確実に固定できるか確認します。
改造履歴
荷台交換、パワーゲート取付、バンパー移設、フレーム加工などを行っていないか確認します。
年式や車両総重量で基準が変わります
突入防止装置の基準には、製作時期による従前規定や適用関係があります。
また、車両総重量3.5t以下、3.5t超7t未満、7t以上などで、装備要件や車体構造による代替要件が異なる場合があります。
そのため、この記事に記載した数値だけを見て、一律に合否を判断することはできません。
実際の車検では、少なくとも次の情報を確認します。
- 車両総重量
- 最大積載量
- 初度登録年月
- 製作年月
- 車両型式
- 架装内容
- リヤオーバーハング
- 指定自動車か改造車か
- 前回車検後の変更内容
「同じ2トントラックだから同じ基準」という単純な判断は避ける必要があります。
リヤ突入防止装置は、トラック後部にバーが付いていればよいというものではありません。
車検では、地上高、後端からの距離、横幅、断面形状、取付強度、腐食、変形などが確認されます。
特に注意したいのは、次のような車両です。
- 荷台を修理または交換した車両
- パワーゲートを後付けした車両
- リヤバンパーを移設した車両
- ダンプや積載車などの可動式装置
- 車高やタイヤサイズを変更した車両
- 年式が古く腐食が進んでいる車両
- 社外品や自作品へ交換した車両
前回の車検に通っていても、その後の腐食、変形、改造によって今回は不適合になる可能性があります。
オーテックプラス本店では、一般的な車検整備だけでなく、巻込み防止装置、リヤ突入防止装置、荷台、アオリ、パワーゲートなど、トラック特有の構造も確認しています。
車検直前に修理や製作が必要になると、部品手配や溶接加工に時間がかかる場合があります。
トラックの継続車検は、期限に余裕を持った事前点検をおすすめします。